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熊本家庭裁判所 昭和31年(家イ)231号 命令

申立人 上田豊一(仮名)

相手方 上田太郎(仮名)

主文

一、相手方は第一目録記載の、申立人は第二目録記載の、各農地について仮に田植その他これに必要な行為をすることが出来る。

二、本件調停終了に至るまで、当事者双方は互に相手方の耕作する農地に立入ることを禁ずる。

(家事審判官 松田富士也 調停委員 今井久賀 島野真光)

別紙目録〈省略〉

事件の実情

イ、申立人の実母(相手方の妻)は昭和二年申立人及び其の兄姉を連れ相手方と再婚し、相手方及びその娘と同居することになつた。しかし、申立人と相手方との間に養子縁組はない。

ロ、申立人の言によれば、当時相手方宅は数回の潮害により荒廃していたが、申立人及びその同胞、母の精励により現在の農地二町歩強を耕作する農家となつた。この間において、申立人の母は苦労のため両眼を失明、兄は今次大戦にて戦死するところとなり、相手方所有の農地は兄戦死に因る遺族扶助料で求められたものであると。

ハ、申立人は相手方の勧めにより妻帯し、相手方は事実上隠居する所となつた。所が相手方と申立人の妻との折合が悪く、相手方は申立人と別居した。

ニ、相手方は最近その所有農地を実子に贈与する考えを持つに至り申立人は相手方がその農地を入手した経過及び、現在まで事実上親子の関係にあつた事より、相手方に対し農地の大半の贈与を求むべく事件申立に及んだ。

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